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トルク型エンジンと馬力型エンジンの違いの話

 みなさん、こんばんは。

 

 さて前回の記事でトルクにまつわるオカルトを話しましたが、その中でエンジンについてトルク型と馬力型という言葉を使いました。では、この2つ、そもそも何が違うのかというお話です。

 

 

nimphaea.hatenablog.jp

 

 

 ちなみにこの話、カスタムには関係ないです。カスタムの限界のお話。

 

 吸排気系統のカスタムとかカムシャフトとかで多少の性格の変更はできますが、根本的には燃焼室の形でトルク型・馬力型が決まっています。

 

 ですから、例えばトラックのエンジンをどれだけお金をかけても、バイク並みに回るエンジンにはできません。現在の技術では…。

 

 

 

 

ボアとストロークとは

 燃焼室の体積 = 排気量はピストンの面積 × ピストンの移動距離で決まります。ピストンは基本的には円なので、面積は直径で決定します。この直径をボアといいます。また、ピストンの移動距離をストロークといいます。

 

 排気量が同じなら、ボアが大きければストロークは短く、ボアが小さければストロークは大きくなるために、それぞれショートストロークロングストロークといいます。

 

 ではこれらによってどう変わるのか。その答えは燃焼効率にあります。

 

 

ショートストロークエンジンの特性 

 ボアの大きいショートストロークエンジンは、ピストンの移動距離が小さく、ピストンの面積は大きいですね。

 

 すると、ガソリンと空気を燃焼室内で燃焼するとき、ピストンの面積が大きくスパークプラグからの距離が大きくなるために、燃焼室内の気体が激しく動くような高回転にでもならない限り、効率よく燃焼できません。

 

 つまり低回転では燃焼効率が悪いために、パワーが出ません。これが馬力型エンジンですね。回転数を上げると、燃焼効率が上がって、トルクと馬力が出てくるタイプです。

 

 ここだけ聞くと馬力型がだめみたいな感じですが、あるメリットが大きいです。それは回転数を上げられることです。ピストンはエンジンの壁と擦れているために、速度の上限があります。たぶん市販車だと25m/sくらいかな?

 

 このピストンの速度を超えると、ピストンの表面のエンジンオイルがなくなって焼け付いたり、コンロッドが負荷に耐えられずに折れたりします。

 

 ピストンの移動距離が小さいと回転数を上げてもピストンの速度が上がらないためにその分回転数を上げることができます。

 

(ピストン速度 = 回転数 × ピストンの移動距離)

 

 つまり、高回転では馬力を出しやすいエンジンになるわけです。

 

 そして、高回転で馬力を出すために、バルブの径を大きくしたり、吸気系の径を大きくしたりしていくために、より低速の馬力がスカスカになっていったものが普通のエンジンです。(なぜこのようなことで低速の馬力が犠牲になるのかはまた記事で書きますね)

 

 書きましたwまたそのうちにもう一件追加します。

 

nimphaea.hatenablog.jp

 

 

 高回転で最高出力が発生すると馬力を大きくできる理由はこちら

 

nimphaea.hatenablog.jp

 

ロングストロークエンジンの特性

 ボアの小さなロングストロークエンジンは、ピストンの移動距離が大きく、ピストンの面積が小さいですね。

 

 つまり、低回転でもしっかりとガソリンと空気を燃焼させることができます。低回転から燃焼効率が良いために低速からパワーが出ます。その結果、トルク感のあるエンジンとなるわけです。

 

 反面、ピストンの移動距離が大きいために高回転まで回すことができません。つまり、馬力を出すためには向かないエンジンとなるわけです。

 

 

実際どのような使われ方がされているか

 ここまでの話を理解された方はだいたい予想がつくと思います。ですが、バイクに乗られている人にとっては意外な話となるかもしれません。

 

 まず、ロングストロークショートストロークといった区別はあくまで相対的なもので、絶対的な基準は存在しません

 

 ここでは、車もバイクも考えたいので、ボアよりもストロークが大きければロングストロークストロークよりもボアが大きければショートストロークとしますね。あとは、ボアとストロークがほとんど同じものはスクエア(正方形)といわれるので、それも使っていきましょうか。

 

 当然ですが、基準が変われば評価も変わります。

 

 例えば有名なS2000ですが、エンジン型式AP2の場合では、ボアは87.0、ストロークは90.7となっています。これはややショートストロークといえますね。

 

 現行のWRX S4はボアもストロークも86.0のスクエアになっています。

 

 年式は調べてませんが、アルファードはボア90.0、ストロークは98.0のロングストローク型ですね。

 

 つまり、この基準では車はややショートストロークからロングストロークあたりが多いことが推測されます。ほかのも調べてみてください。

 

 ではバイクに移ります。低速から力あるだろうなっていうCB1300SFはボアが78.0、ストロークが67.2です!意外じゃないですか?

 

 ZX-10Rではボアが76.0、ストローク55.0にまでなります。かなりショートストロークですね。

 

 クルーザーのドラッグスター1100でもボアが95.0、ストロークが75.0とショートストロークになります。

 

 この基準ではバイクはかなりのショートストロークからショートストロークに分類されることになります。

 

 つまり、ショートストロークなエンジンになるほど軽量・スポーティな使い方をされているということです。

 

 ショートストロークエンジンって馬力と高回転がうりになるわけですが、車乗る人はほとんどそんなの気にしませんからね。大体は燃費がいいのがいい。そうすると、低回転で力が発揮できるロングストロークエンジンのほうが向いているわけです。

 

 スポーツカーになるとこれが変わってきます。馬力と高回転が欲しい。でも発進でいちいち高回転にすると耐久性がやばいから、低速のパワーも欲しい。そうすると、だんだんスクエアあたりに近づいて来る感じです。

 

 バイクになると車重がないから低回転のパワーがいらない。もっとパワーがほしければどんどんショートストロークにできる。

 

 こんな感じで使い分けがされているというわけですね。